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薮田織也のプロダクツレビュー高機能ワイヤレスストロボコマンダーAir 10s を試す


Photo & Text:薮田織也 モデル:いのうえのぞみ


TOPIX


CP+ 2017 で発表されて以来、プロ・アマ問わず写真家の耳目を集めてきた高機能ストロボ・コマンダーのキヤノン対応「 Air 10s 」がついに発売されました。今回は本サイトの写真家、薮田織也が未発売のニコン対応版をレポートします。 by 編集部



Index


 


■写真1 Air 10s といのうえのぞみさん

今回はモデルとしていのうえのぞみさんに登場してもらい、Air 10s + i60A で日中シンクロと夕景ポートレートを試してみた


クリップオン・ストロボを遠隔操作できるニッシンジャパン製コマンダーの「 TTL Strobe Commander Air 10s 」( 以下 Air 10s )。今年の CP+ 2017 で発表されてから8ヶ月あまり、今年 10 月に第1弾としてキヤノン対応製品がリリースされた。ニコン、オリンパスユーザーである薮田としては、まだ待たされるのか! という気持ちでいたが、11 月の初頭にニコン用のワーキングモデル( ほぼ製品版に近い )をレビュー用に試用するチャンスを得た。さっそくここ2週間ほど、ポートレート撮影で使ってみたので、その使用感を報告させていただこう。



■ いきなり本音をぶちかましてもいいですか?



■写真2 Nissin Air 10s を Nikon D800 に装着

Air 10s のサイズは従来機 Air1 とほぼ同じ。フルサイズ一眼レフにフィットする大きさだ


Air 10s の詳細に入る前に、いきなりだが結論的なことを書く。この Air 10s 。とっても使える……なんの問題もなく便利に使える。特に Air1 ユーザーならば買った方が良い、というか買うしかない! ……と薮田は思うのであります。

なんでいきなりここまで書くのかというと、Air 10s の下位機種である Air1 で感じていた不満点を Air 10s はすべて解決してくれたからだ。薮田が感じていた Air1 の不満点は2つ。ひとつはストロボの調光が1段ずつしかできなかったこと。しかしこれはストロボにディフューザーを被せるとか、被写体との距離を離せばある程度は解決できることだが、ふたつめの不満点は解決法がなかった。それは、ロケ現場の電波環境によってまれにストロボを発光させられなかったことだ。まれに、とはいえ、プロの現場でストロボの発光ミスは痛い。リテイクできない撮影では致命的だ。それゆえ絶対に失敗できない撮影では Air1 を使うのをためらっていたこともあるんですよ。ええ。


それがですね皆さん、この記事を書くまでの2週間、ほぼ毎日のように Air 10s をポートレート撮影で使っていましたが、完璧に発光してくれたんですよ! 一度も発光ミスがなかったんですよ! 当たり前のことなんですが、なんだか嬉しくなっちゃって、他の便利な機能なんかどうでもよくなってしまったくらいですよ(笑) というわけで、Air 10s は買い、ということで本レポートを終わ……らせるわけにはいかないので、次のセクションから Air 10s の機能を使用感とともにレポートしよう。



 

■ そもそもストロボ・コマンダーってなに?


■写真3 Air 10s 操作面

いきなり個人的な本音をぶちかましてしまったが、そもそもストロボ・コマンダー Air 10s ってなんだ? という読者に向けて簡単な解説をしておこう。クリップオン・ストロボをカメラから離して( オフカメラと呼ぶ )、電波式ワイヤレスで遠隔制御するカメラアクセサリーを、ストロボ・コマンダーやスピードライト・トランスミッターと呼ぶ。ストロボをオフカメラで単純に発光させる方法は昔からあるが、電波式コマンダーの優れたところは、手元のコマンダーでストロボの発光量をマニュアルで微調整できることで、最新のものはカメラの TTL 自動調光にも対応している。


ニッシンジャパンが発売するストロボ・コマンダー Air1 および Air 10s は、NAS( Nissin Air System )と呼ばれるニッシン独自の通信方式を採用している。この NAS に対応しているクリップオン・ストロボであれば、ストロボの発光量はもちろん、照射角度もコマンダーで調整できるという優れものだ。従来の単純な発光しかできない方法では、調光や照射角度の調整の度に撮影位置から離れたストロボまでいく必要があったが、電波式ストロボ・コマンダーの登場で、撮影のワークフローが省略され、撮影者はイメージの創出により専念できるようになったのだ。



 

■ 最長通信距離 100m で確実に発光


■写真4 Air 10s 左側面

では、ここから Air 10s の詳細に触れていくとしよう。まずもっとも読者諸氏に伝えたいことのひとつめ。それは Air1 では電波の最長通信距離が 30m だったものが、Air 10s で 100m になったことだ。2週間の試用で Air 10s に発光ミスがおきなかった最大の根拠はおそらくここにある。Air1、Air 10s ともに 2.4GHz 帯の無線を使っているが、ご存じ Wi-Fi や無線 LAN の電波の多くも 2.4GHz 帯を使っている。そのためスタジオでの撮影時には、スタッフの何人かがスマートフォンを使っていると、Air1 の電波が疎外されてしまうことがあったのだ。これは Air1 に限ったことではなく、他社製の最長通信距離 30m 程度のトランスミッターやコマンダーでも起きていた問題だ。こうした問題を解決するには電波の出力を高めればよいわけで、Air 10s はその対策が施された、というわけである。


■写真5 Air 10s 右側面

最長通信距離が 100m まで伸びたことにより、スタジオはもちろん、人の多い公園での撮影でも発光ミスは1度もなかった。もちろん、電波の環境は場所によって大きく変わるので、確実に発光すると保証するものではないが、少なくとも薮田の今後の撮影では Air1 ではなく Air 10s を使うことになるだろう。


最長通信距離 100m は、ストロボを確実に発光させられること以上に、画作りの自由度が高まるはずだ。想像してみて欲しい。100m 先に設置したクリップオン・ストロボによる遠景撮影を。そうした遠景撮影を今回は試していないが、時間ができたら是非やってみたいと考えている。ちなみに、出力アップした Air 10s も技適マーク( 総務省管轄の特定無線設備の技術基準適合証明等のマーク )を取得しているので日本国内で安心して使える。



 

■ ポートレート撮影での日中シンクロに最適な TTL 発光


■写真6 日中シンクロのサンプル

さて、頭上付近にお陽様がある時間帯での屋外ポートレート撮影では、順光にすると顔に強い影が出てしまうし、逆光での撮影で顔を明るく露出補正すると背景が飛んでしまうという問題がある。こんなときにはレフ板を使って顔を明るく起こすわけだが、ロケーションや太陽の位置によってはレフ板では難しい場合が多々ある。そこでクリップオン・ストロボをオフカメラで日中シンクロさせるというわけだが、こんなときに TTL 自動調光は大変便利だ。レンズに写った被写体の明るさをカメラが計測して、最適な露出に必要な光量を都度ストロボに伝える仕組み、それが TTL 自動調光だ。お陽様は刻々と位置を変えるし、被写体は人物だから常に動いているし、撮影場所もいろいろと変えてみたい。そのたびにカメラの露出設定からストロボの調光までやっていたら、被写体に飽きられてしまうだろう。マニュアル発光だとテストを繰り返してからの撮影になるが、TTL 自動調光であれば最低限のテストで本番にのぞめるのだ。なによりもポートレートはリズムが大切。俺は硬派なマニュアル派だなんて言っていないで、被写体の魅力的な表情を逃さないようにするために、便利な TTL 自動調光を使ってみよう。


■写真7 日中でも見やすい LCD パネル

Air 10s の TTL 発光モードは、±2.0EV( ±2段 1/3 ステップ )で調光できる。ストロボ光が強いなと思えばマイナス調光、もっと強く発光させたければプラス調光するわけだ。ここでは i60A を1灯使って TTL 発光モードで日中シンクロしてみた。




■写真8/写真9  ストロボ未発光/ストロボ発光


■写真10 TTL 発光モード

写真8写真9は、両方共に ISO 感度 200 で、絞り f/3.2、シャッタースピード 1/4000 秒で撮影したもの。写真8がストロボ無し、写真9がストロボ有りだ。背景の明るさはそのままで、被写体の人物だけ明るく撮影できた。Air 10s は 1/8000 秒までのハイスピードシンクロ( FP 発光 )に対応しているので、こうしたピーカン時の日中シンクロでも十分に使える。







■写真11/写真12  マニュアルモード/HSS モード



 

■ マニュアルモードは 1/256 ~ 1/1 まで 1/3EV 刻みで調光


Air 10s の調光ステップは 1/3 段刻みだ。1段刻みでしか調光できなかった Air1 では、調光での光量差が激しく、微妙に調光したいときはディフューザーを使って減光させたり、ストロボの位置を被写体に対して前後させるなどして調光せざるをえなかった。Air 10s より先行して発売されたクリップオン・ストロボ i60A 自体は 1/3 段刻みに対応し、1/256 までの微少発光ができるが、Air1 で使う場合は1段刻み、最小発光量は 1/128 でしか調光できなかったのだが、Air 10s と組み合わせることで、i60A の性能がフルに発揮できることになるわけだ。また、Air シリーズの最古参、Di700A 自体は1段刻みでの調光しかできないが、ファームウェアアップデートにより Air 10s と組み合わせて 1/3 段刻みで使えるようにすることも検討中とのこと。


■写真13 TTL メモリー機能

TTL で測光した設定をマニュアルモードにコピーできる


TTL での自動調光は使いたいが、続けての撮影では TTL で得られた光量を微調整して固定発光したい……というときに大変便利な機能が Air 10s に搭載された。それが「 TTL メモリー機能 」だ。使い方はいたって簡単。Air 10s でいったん TTL 発光モードにて撮影した後で、マニュアルモードに切り替えるだけ。TTL で調光された光量をマニュアルモードでの光量にコピーしてくれる。この機能は Air 10s をカメラにセットして、TTL を使って撮影しないと機能しないので注意。



 


■ 何十灯ものストロボをコントロール


■写真14 Air 10s では4+4の8グループまで管理できる

Air 10s では、基本グループとアドバンスグループに各4グループ、計8グループにわけてストロボをコントロールできる。各グループごとに調光や照射角の設定ができる。基本グループには従来の NAS 対応ストロボを、アドバンスグループには来年以降発売される新しい NAS 対応ストロボを設定できる。アドバンスグループでは、グループごとにマニュアル、TTL の両発光モードを割り当てられるほか、後述するオープンモードの設定ができる。基本グループからアドバンスグループへの切り替えは写真 14 のボタンを押す。グループ表示のA~Dの上に・が表示された状態がアドバンスグループだ


薮田が所有している NAS 対応ストロボは5灯だが、これらはすべて Air 10s でコントロールできた。内訳は、ニコン用 i60A ×2灯、Di700A ×1灯、キヤノン用 Di700A ×1灯、フォーサーズ用 i60A ×1灯だ。試用した Air 10s はニコン用だが、ストロボは NAS に対応していさえすれば、カメラのプラットフォームが違ってもコントロールできるのだ。実際のところ Air 10s で何灯までのストロボをコントロールできるのだろうか。開発元のニッシンジャパンに問い合わせしてみたところ、Air 10s でコントロールできるストロボの数は理論上は無制限なのだそうだ。ただ、これまでの試験で 21 灯までは実証済みらしい。これは Air1 での実験で、1グループに7灯×3グループで 21 灯。Air 10s は基本グループ A ~ D の4グループと、アドバンスグループでさらに4グループの計8グループ使えるので、Air1 の結果で推測すると 7×8の 56 灯をコントロールできそうだ。60 灯近くのストロボを半径 100m 以内で発光させてなにを撮影するんだ? と思うかもしれないが、照明設備のない梅園の夜景を撮影したら……と考えるとちょっとワクワクする。一度試してみたいものだ。



■写真 15 3灯のストロボ多灯撮影をしてみた

のぞみさんにモデルになってもらい、Air 10s + i60A × 3灯の多灯撮影にチャレンジ


薮田が試した多灯ストロボ撮影は3灯。夕陽の沈む海辺にのぞみちゃんに立ってもらい、2~3灯の i60A を使って撮影してみた。写真 15 が撮影状況。左にライトスタンドで立てた i60A が2灯。右にアシスタントが手持ちで1灯。カメラ側の設定は、絞りが f/11、シャッタースピードは 1/400 秒。ISO 感度は 200。レンズ焦点距離は 24mm。ストロボの設定は、左の i60A は2灯ともにフル発光で、右の i60A は1/2、すべて Air 10s のマニュアルモードでの発光。



■写真 16 夕陽をバックにストロボ多灯撮影( 3灯 )

Nikon D800 + TAMRON SP 24-70mm F2.8 Di VC USD + Air 10s + i60A ×3  forcus:24mm f/11 1/400sec ISO:200


こうして撮影したのが写真 16 だ。ストロボの光が地面に届かないように、照射角は3灯ともに 200mm 相当まで狭くしてある。レンズ焦点距離が 24mm と広角なのに対して、ストロボの照射角は超望遠レンズ用なため、まるでスポットライトを使ったような効果を演出できるのだ。照射範囲を狭める場合、従来であればスヌートなどのストロボ用アクセサリを使うところだが、Air1 や Air 10s を使ってからというもの、アクセサリの出番が激減してしまった。また、スヌートを使っている場合は調整の度にストロボを設置した場所まで行かなければならないが、こうして照射角が手元で操作できると、モデルさんを待たせることなく撮影に専念できるのがいいところだ。



■写真 17 夕陽をバックにストロボ多灯撮影( 2灯 )

Nikon D800 + TAMRON SP 24-70mm F2.8 Di VC USD + Air 10s + i60A ×2  forcus:26mm f/11 1/1250sec ISO:200



■写真18 ストロボのオン・オフ

写真 16 と少し違ったイメージでも撮影したいと考え、夕陽を少しだけフレームインさせ、右側のストロボをオフにしてみたのが写真 17 だ。Air 10s とペアリングしたストロボのオン・オフも、手元で操作できるのは嬉しい。






今回の撮影で使ったライトスタンド LS-50C は、ニッシンジャパン初のストロボアクセサリ。全高2m も伸ばせるのに、カーボンファイバーを採用したことで重量が 575g しかない超軽量のライトスタンドだ。写真 18 を観てもらえばわかるが、女性が指だけで持てるほどの軽さだ。収納時は 48.5cm とコンパクト。クリップオン・ストロボに最適のライトスタンドといえるだろう。



■写真19 ライトスタンド LS-50C

女性が指で挟んだだけで持てるほど軽いライトスタンド LS-50C。収納時 48.5cm を引き延ばすと2mにもなる


















■写真20 LS-50C の全高

少し脱線するが、Air 10s + i60A の組み合わせに、オレンジのストロボカラーフィルターを使っての撮影にもトライしてみた。写真 21 はノーフィルターでの日中シンクロ。ホワイトバランスは自動。背後の緑が晩秋らしい色だが、少し寂しく感じたので、i60A に 3500K のオレンジカラーフィルターを装着し、カメラのホワイトバランスをカスタムで 3500K に設定して撮影したのが写真 22 だ。カラーフィルターでオレンジに色かぶりした部分はホワイトバランスでブルー系に補正され、自然な色味になるが、背景は一様にブルーがかる。ちょっと寒々しく感じるかもしれないが、衣装とマッチするイメージになった。










■写真21/22 カラーフィルター無し/カラーフィルター使用



 

■ Air 10s のユニークな新機能


■写真23 モデリングライト

Air 10s には、前述した機能以外にユニークな新機能が搭載されている。そのひとつが「 モデリング発光 」。来年以降に発売が計画されているニッシン製の新ストロボでには、モデリングライトが搭載されるらしい。そのモデリングライトを Air 10s でコントロールできるわけだ。モデリングライトとは、ストロボの発光面付近に搭載された、ハロゲンライトや LED ライトのことで、ストロボを発光させる前に光の当たり方を確認するためのライトだ。モデリングライトはジェネやモノブロックなどの大型ストロボには標準的に装備されているが、クリップオン・ストロボではまだ一般的ではない。ストロボは閃光ライトなので、光の当たり方を確認するには何度か実際に撮影してみる他はないのだが、モデリングライトが使えれば、テスト撮影が最小限にできるメリットがある。前述したように、人物撮影においてはテスト撮影は最小限にしたいので、モデリングライトの搭載は大歓迎だ。



■写真24 撮影会などで活躍するオープンモード

Air 10s のもうひとつのユニークな新機能は「 オープンモード 」だ。本来、Air 10s のようなストロボ・コマンダーは、ストロボとコマンダー間は排他的に接続されるのが普通だ。自分のストロボは自分のコマンダーでのみコントロールできるようにしておかないと、同じ NAS 製品を使った撮影者が近くにいた場合、ミス発光してしまうことになるからだ。ところが Air 10s でオープンモードを使うと、2台以上のストロボ・コマンダーで同じストロボ( NAS のオープンモードを搭載したストロボのみ )をコントロールできるようになる。一般的なユーザーであれば、なんのメリットがあるのかと感じるかもしれないが、撮影会や写真セミナーに参加したことのある読者ならお気づきだろう。そう、ストロボを使った撮影会やセミナーにおいて、ひとつのストロボ・コマンダーを、いちいち装着し直す必要がなくなるわけだ。これは薮田のような写真セミナーの講師をしている側にとって大きなメリットとなる。もちろん受講者のみなさんにとってもストレス軽減につながるわけだ。このオープンモードも、来年以降に発売される NAS 対応ストロボで使えるようになる。



■写真25 ストロボからシャッターを切る?

Air 10s に搭載されたユニークな新機能、最後は「 リモートシャッター 」だ。これも来年以降に発売される NAS 対応ストロボで使えるようになる機能だが、初見では Air 10s を装着したカメラのレリーズを Air 10s から切れることは想像できても、それがなんのメリットを生むのかわかりにくいだろう。ニッシンジャパンのリリースにも詳細は一切書かれていない。そこで薮田が想像していることを書くが、来年以降に発売される NAS 対応の新しいストロボを使うと、ストロボ側から Air 10s へ信号を送り、離れた場所に設置してある Air 10s を装着したカメラのレリーズが切れるのではないか。これができると、カメラから離れてストロボを手持ちし、被写体の前で照射位置を探りながらカメラを遠隔操作して撮影できることになる。あくまでも薮田の想像なので、実際のところは来年の新ストロボを待つしかないが、かなりワクワクする機能であることは間違いないだろう。


■写真26 リモートケーブル

カメラの機種によってリモート端子が異なるため、2タイプのケーブルが付属する









■写真27 専用ポーチ

付属の専用ポーチには、Air 10s とリモートシャッターケーブルを収納できる













 

■ ファームウェアアップデートが自分でできる!


■写真28 MicroSD カードでファームアップ

従来のニッシンジャパン製クリップオン・ストロボ関連製品のバグフィックスや新機能対応時のファームウェアアップデートは、製品をメーカーに持ち込むか送る必要があった。カメラ本体が PC と接続してファームウェアアップデートできる時代に、この方法は前時代的と感じていたが、Air 10s ではユーザーが自前でアップデートできるようになっている。必要なものは MicroSD カードと PC。ニッシンジャパンの Web サイトからダウンロードしたファームウェアアップデートファイルを MicroSD に書き込み、それを Air 10s の専用スロットに差し込めば、自動でファームウェアがアップデートされる仕組みだ。その際に注意したいのは、何も記録されていない MicroSD を使うことと、アップデートファイルはフォルダに入れないこと。もし古いアップデートファイルがあったら必ず削除すること。そして、これは些細なことではあるが、Air 10s の MicroSD 挿入スロットを保護するダミーカードが、スロット内のバネで飛び出しやすいので要注意。MicroSD の挿抜時はなんの問題もなかったが、ダミーカードは寸足らずのためか、頭を軽く押しただけで勢いよく飛び出してしまい、ロケ撮の現場で何度かなくしそうになった。



 

■ 総評


Air1 よりも高機能・高性能になったため、初めてストロボ・コマンダーを使う人にとって操作系は少し複雑になってしまった感はあるが、Air1 ユーザーならマニュアルレスでも操作できるほどに UI は優秀だ。LCD パネルの視認性も極めて高く、晴天の屋外でも難なく操作できた。ただ真っ暗なスタジオでは LCD パネルが明るい分、操作ボタンがまったく見えなくなるのには少し困った。それでも冒頭で書いた通り、個人的には試用期間中の発光ミスが一度もなかったという点がすべてに優る。このことは、Air 10s + NAS 対応ストロボがプロの現場で使えるアイテムであることの証明になるだろう。そして来年以降に発売される新しい NAS 対応ストロボと組み合わせれば、ストロボ撮影をさらにクリエイティブなものにしてくれるはずだ。



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